筑波大学での事前取材を終えたのち、
全6巻のシナリオと2週間のロケーションスケジュールを
組みました。
提出先は小中学生向けの教材を出版している新学社。
ポピーや有名な猫のキャラクターがイラストにはいったドリルなどを
出版している会社です。
当時は本社の京都から東京へ新しく支社を設立したばかりでした。
そこで新たな試みとして、
小学生向けに今までにない新しい映像教材をということで
今回の水泳教材の企画には快諾してくれたのです。
野村教授の基本理念である
「人間が本来、身体に備えている機能に合わせて泳ぐ」を
子どもたちへわかりやすく伝えるには
「見てみて”やりたい!”と思わせること」が重要でした。
水とは戦わないで、親しくなること、
速く泳ごうと力任せに進もうとする動きではなく
身体のつくりにあわせて泳ぐこと。
すると、いつの間にか楽しくなってくる。
中からわいてくるその楽しさへの
きっかけとなる教材にしたかったのです。
そのため、理論を言葉で説明するのではなく、
モデルが泳ぐ実際の映像でポイントとなる身体の動きを見せたあと、
その姿を、前、横、上と、映像を繋げる
サイバービジョンという技法を取り入れました。
そうすることで、泳いでいる時のイメージを立体的に持てるようにしたのです。
さらに、泳ぎのリズムを覚えてもらうために
映像の後ろにレゲー音楽を流しました。
当時、まだ日本では馴染みのないカルチャーでしたが
「泳ぎのリズム」を覚えてもらうには
最適でした。
モデルとして出演してくれたのは
筑波大学の水泳部の選手と付属小学校の生徒です。
毎日猛練習を重ねていた彼らですが
この撮影で野村教授の理論を身体で理解し、
徹底的に実践したこともあってか
なんと撮影後、クロールに出演してくれた女性の選手が
100mのタイムがなんと10秒も速くなったそうです。
撮影は予定通り進みましたが、その後の編集に丸2ヶ月かけて
ようやく1本10分、全6巻の水泳教材が完成しました。
野村教授はその後、6人ものオリンピック選手の育成と
指導にあたり、大学のみならず「水中運動療法」という
運動が苦手な人や、介護が必要な方への運動処方のサービスを立ち上げています。
あれから数十年たった今でもその理念は変わらず
「水と親しくなり、楽しく泳いで、健康で長生きを」と幅広く活躍されています。
この時作った作品はVHSしかなくて映像を紹介出来ません。
パッケージの写真とプールに貼る防水紙で出来たイラストを載せておきます。
バタフライの基本
楽しく泳ごう
水に慣れて泳ぎ始めるまでがすごろく形式になっています
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