前回までのローマ市 清掃局とザール社のお話しを聞いて、ドイツやオランダやパリとごみ問題への取り組み方が違いを感じた方も多いかと思います。
他の国に比べ、ローマ市 清掃局の対応は明らかに事務的で、パリで出会ったモルドー氏のように生活に欠かせないあらゆる問題を解決する仕事をしている気概は感じられませんでした。
また、“ごみ全自動処理システム”を開発したというザール社のツェローニ社長の話も、
上辺だけで設備や技術に真新しさはなく、作っていた牛の飼料と堆肥もレベルの低いものでした。
さらには、清掃局長が約束していた焼却場と埋立地の撮影も守られなかったのです。
ローマはどの角度から切り取ってもごみ処理先進地というテーマに嵌まらず、記録映画の中では簡単にしか紹介しませんでした。
今回、このことを書くにあたりインターネットで現在のローマのごみ事情を調べてみましたら驚くべき状況であることがわかりましたのでご紹介します。
まず「ローマ ごみ問題」で検索すると道路わきに置かれた大きなカゴから分別されていないごみがあふれて散らばっている様子や、バチカン宮殿らしきドームが見える道路の真ん中に段ボールと発砲スチロールの空き箱が捨てられている写真がたくさん出てきます。
”ごみで健康被害の可能性 長年の失政、嘆く市民”
とタイトルのついたNewsPhere(ニュースフィア)の2019年6月の記事によると、
(写真は記事より引用/ https://newsphere.jp/national/20190703-1/)
「イタリアの首都は、夏の暑さで悪化して 新たなごみの緊急事態に苦しんでいる。
市内の街路のいたるところにごみ箱があふれ、ローマの医師たちは健康に悪影響をもたらしかねないとして警告を発している。
ごみの投棄は、何十年にもわたって永遠の都市ローマを苦しめ続けてきた。マラグロッタ廃棄物埋め立て地が2013年に閉鎖されて以来、毎年捨てられる170万トンものごみを処理できる広大な土地はローマのどこにも残されていない。歴代の市長はそれぞれ異なる政党から誕生したため、誰一人としてこのごみ問題を解決できないままでいた。」
と書かれています。
その後にも「信じられないほど強烈な悪臭で外に出られない」と語る女性や溢れたごみの周辺を犬猫や、カモメなどが漁ることで糞尿を介した細菌感染が人間にも広がっていると深刻な状態が伝えられています。
もちろん、レジ袋を生分解性プラスチックのものにしたり街中のところどころに設置されている廃棄物収集ステーションにカラスや動物が荒らさないように頑強なフタを取付けるなど対策はしているようです。
しかし、収集ステーションに入りきらないごみを無理矢理、押し込みフタが閉められていない状態だったり指定の収集ステーション以外のところにごみを山積みにしたりとゴミ捨てのマナー違反が目立つ結果となっています。
紹介した記事の最後には
「ローマの環境と都市政治を考える地方委員会の議長を務めるマルコ・カッチャトーレ氏は語る、
『誤った政策が60年間も続き、その結果深刻化したごみ問題をたった1年やそこらで解決する方法など存在しない。
この厄介で構造的な状況は短期的に解決するのは不可能だ』
※一部抜粋
と書かれています。
私たちが取材した1975年11月はまさに“誤った政策”の真っ只中にあったということになります。
ローマ市政が間違っていたのは結果に出ていますがでは、市民はこの自分たちの暮らしを脅かす問題に対して自治体へ改善を働きかけていたのでしょうか。
これについては、また別の機会に話しましょう。
さて、次回からは、アメリカのごみ事情です。
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