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執筆者の写真有限会社シューコーポレーション

水物語その120 アメリカのごみ処理事情⑦

ヒューストンでの取材は2日間でした。


ここでの最大の目的は、アメリカ最大の廃棄物処理会社ブローニング・フェリス株式会社の本社への取材でした。

当時の都市の特長を青柳さんが書いていますのでまずはそれを紹介します。

「ヒューストンはメキシコ湾にのぞむ新興工業都市である。直接外海に面するのではなく、深く切れ込んだガルバストン湾から掘割を通って約80キロ内陸に入った、平坦な広野に立地している。

港の近くには石油精製や石油化学プラントの塔が群れを成して立っており、その間を運河と鉄道が縫っている。

港と街を繋ぐ高速道路が何本も走っていて、その中間に雨天でも野球ができる巨大なアストロドームがある。

市街地は街路が整然とした縞模様になっていて、中央には高層ビルが並んで建っている。

どのビルも淡い色をしており、この10年以内に建てられたとのこと。

目指すブローニング・フェリス株式会社(以後、BFI社)は、銀行名を冠した瀟洒な近代的ビルの最上階に有った。

受付と応接室のインテリアはモダンで真新しく、ここが廃棄物処理の会社だとはとても思えなかった。」


通された応接室で待っていると、広報部長のギレスピー氏がやってきました。

ギレスビー氏は50代ぐらいで、クールな見た目をしていて、とても人当りが柔らかく、我々の取材にも優しく応じてくれました。

お互いの紹介が終わると、すぐに事業内容を紹介する映画を見せられました。


「BFI社は、現在アメリカ34州、カナダ4州及びプエルトリコの家庭と事業系のごみを収集して130箇所の拠点に集めて65箇所で埋め立て処理をしている。

7000人の従業員が青と白でデザインされたごみ収集車で家庭ごみと粗大ごみを集めている。

他に、化学廃液を集めるバキュームカーも有して8か所の化学廃液処理場で処理している。1974年の事業収入は7万9千万ドル、日本円で2400億円、廃棄物処理業者としてアメリカ第1位、2位の業者の2倍のスケールである。」


非常にクオリティの高い映像として制作している点に、会社の自信と意気込みが感じられました。


映画の後におこなったインタビューでは、アメリカのリアルなごみ処理実情とEPAが掲げるプロジェクトの問題がわかりました。


まず、1970年から公害問題が浮上し各州と都市のルールが厳しくなりました。

埋立て処理も、地下水汚染やメタンガス発生のない衛生的埋め立て方式が求められ、その結果、自治体が新しい埋立地を持つには、住民公聴会の承認が必要になったのです。

しかし、住民公聴会を説得するのは、法律と実務面で相当な経験が必要であり、忍耐と時間が掛かります。 


BFI社には、法律と実務に実績を持つスタッフが何人も居るので、問題を抱えた多くの自治体や州から作業委託が寄せられて現在の事業拡大につながりました。

実際、BFI社は、EPAの埋め立て処理基準を全てクリアーしており、跡地利用の例としても緑地公園やゴルフ場建設をセントルイス市で実現していました。


合衆国政府とEPAは、資源と環境を守る廃棄物処理計画を進めていたものの、

それを実行するには処理費用が掛かり過ぎてしまい、財政がひっ迫しているので自治体が多い中で掲げるプロジェクトには現実味はありません。


埋め立てごみ処理費用は1トン当たり約6ドル(日本円で約2000円)ですが、

新しく焼却場を建ててごみを処理すると1トン当たり30ドル以上(日本円で1万円以上)も掛かってしまいます。


インタビューを終え、アメリカとは広大な土地を持っていて経済性を最優先とする現実主義の国であることをまざまざと実感しました。


48年後の今、EPAの記録をインターネットで調べてみると、

計画していたプロジェクトの名前や成果は一つも残っていません。

一方、廃棄物処理企業のBFI社は今ではアメリカを代表する巨大企業となり、

専用のごみ袋は全国のスーパーで売られているようです。


次回は、西海岸の巨大都市ロスサンゼルスのごみ事情です。

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