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執筆者の写真有限会社シューコーポレーション

水物語その129 プラスチック廃棄物製タコ壺

更新日:2023年8月11日

今回は、プラスチック廃棄物で作ったタコ壺のことを書きます。


タコ壺と聞くと

茶色の釉薬が塗られた素焼きの壺を

想像する人もいると思いますが、

今の若い人は、これからお話しする

プラスチック製の箱型のタコ壺しか

見たことがないかもしれません。


<従来の素焼きのタコ壺とコンクリートのタコ壺>


<出来上がったプラスチック製のタコ壺>


<プラスチック製のタコ壺を使ったタコ漁>



映像で紹介するのは簡単ですが、ラジオですから言葉で説明します。

プラスチック製のタコ壺は

従来の壺型ではなく、長方形の箱型をしています

中は空洞でタコが入ったら入口の蓋が閉まるしくみです。

入口の大きさが縦35cm 横30cm、中の奥行きは45cmほどです。


日本列島は四方を海に囲まれていますから

タコ漁は北海道から沖縄まで全国で行われています。

現在ではプラスチック製のタコ壺が主流となっており、

使われている数はおよそ1千万個と言われています。

この撮影をした1981年の時点では、

プラスチック製のタコ壺はまだ新しいものでしたが

既に全国で300万個は使用されていて、年々増えているとのことでした。


全国のタコ漁師にプラスチック製のタコ壺が選ばれる理由は

陶器やコンクリート製に比べ、

割れない、軽い、そして抜群の捕獲率という点でした。

タコが入ると入口が閉まり逃げられない仕組みは

今までにはないものだったのです。

さらに、壺の色と表面の肌触りを‘タコ好み’にすることで

捕獲率を上げることができたのです。

では一体、タコ好みの色と肌ざわりとは何でしょう?


映画の中で、発明者の鹿島博文(かしまひろふみ)さんが説明してくれます。


<タコを掴んで語る鹿島博文さん>


鹿島さんはタコを飼っている水槽から一匹掴み出しながら

「これがタコですがね。タコという生き物は綺麗なところを好む生き物でしてね。

 海底に居るカニやエビを餌にして生活しておるわけですが。」

「タコが好む色というのは、大体オレンジ色がよいようです。

 餌になる生き物を捕まえるときには

 海藻や岩の形に姿を変えて待ち受けます。

 それを擬態といいますが、それは見事なもので、

 人間でも慣れた人でないと見破れないほどです、

 そんな時のタコは緊張しています。

 タコ壺に入って自分の住まいにいるときは

 寛いで安心した時の色、オレンジ系の色になります。

 だからそれと同じ色が良いのです。」


続けて、タコ壺の表面の肌ざわりについて語ってくれました。

「タコ壺に入る前には、

 まず、上に乗って足を一本壺の中に入れて探ります。

 次に目で確かめてから入ります。

 その時に、吸盤が吸いつきやすく離れやすいことが大切です。

 ガラスの表面のようだと吸い付きは良くても離れにくい。

 だから表面はザラついていること。

しかし、ザラ付きが大きいと吸いつきにくい、

 ちょうど良いざらつき具合であること、

 それを見極めるのが難しかったですね。」


もっともタコが好むの色と肌触りにするために

タコの生態について、試作と研究を重ねたそうです。

そしてようやく、オレンジ色の石の粉をある配分で混ぜることに

行きつき完成したのです。


<石の粉を混ぜて練り上げた原料>


<パーツの1つ>


タコ壺を完成させるまでに約2年間の歳月がかかりました。

毎日毎日、夏も冬も、潜水服を付けて海に潜り続け、

試作品を作ってはタコの反応を観察していたそうです。


インタビューで開発までの経緯を直接聞いていると、

ご本人から強く伝わってくるものがありました。

その思いを私は、結びのナレーションに込めました。

「従来のタコ壺に比べて、品質と機能と作業性に優れた

 プラスチック再生タコ壺誕生の陰には

 タコに魅せられたひとりの人間の

 執念に満ちた努力があったのです。」


撮影時点では、

タコを食べる国のスペインとイタリアへの輸出も始まっていました。

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