今回は矢部養豚場の溜池のお話しです。
この溜池は尿を集めて処理する池で、全部で3つあります。
2番目の溜池は1番目の溜池より一段低くなっていて
池の端の溝からオーバフローで流れ込むしくみになっています。
2番目の池の液を汲み上げ、矢部さんが手で温度を確かめます。
<2番目の溜池>
<素手で温度を確かめる矢部さん>
内水先生も指を入れ「15度くらいですね」と確認してから
3番目の溜池へ移動します。
同じように温度を確認し
内水先生は「液発酵」について説明します。
「まともな水を飲んだ豚の体内が
自然のあるべきバクテリアバランスになり、
その糞と尿もそのバクテリアバランスを持って出てくる。
その尿を自然の理想の状態に溜めると、
液発酵が起きて温度が上がる、
有機物は分解され、一部はガス化し、
一部は分離して汚泥になる。
出来た液は生き物にも土壌にも有効な液肥になり、
自然に本来備わっている循環系が実現するのです。
矢部さん、これ農業と組むことを考えませんか」
「そうですね、これまでは臭くて、余計なものと思われていましたから」
<液発酵で液肥が出来る説明をする先生>
場面は変わり
今度は3番目の溜池の液肥を豚舎に撒き
豚たちの反応を見ます。
豚たちはギャーギャーと明るく鳴きながら液肥を舐めます。
<撒く液肥をなめる豚たち>
次に、3番目の池の底に溜まった泥を
乾燥させ土にしたものを豚舎に撒きます。
矢部さんは土を撒きながら、経過を語ります。
「実は、ある会社の薬を使ったんです。
そしたらウジが湧いてウジが湧いて、
何億匹のハエが口の中に飛び込んでくるんですよ。
それで、先生に相談したら、アレを撒いてみたらと言われて撒きました。
そしたらハエが逃げるんですね。餌にたかっていたハエも逃げる。
で、これは本物だわと、腐植でつくる水のことを確信しましたね。
これまで、何をしてやれば家畜が喜ぶかなんて、
一度も考えたことが ありませんでした。」
その言葉はおいしそうに水を飲む仔豚の映像に重なります。
<水を飲む仔豚の様子>
「土と水の自然学ー農業編」は
最後にスタッフテロップが出て終わります。
内容のほとんどが家畜の糞尿処理と
悪臭・ハエの話でしたが、
実際に現場で働く人々にとってこの映像は
今まで諦めるしかないと思っていたこと、
資金をかけなければできないと思われていたことが
できるようになると思わせるのです。
殻の固い良い卵ができること。
体細胞の少ない牛乳が採れること。
臭くない豚肉が出来ること。
そして、何より臭いで周辺住民に
迷惑を掛けないですむことができるのです。
実際に、このビデオで紹介した技術を元に
1995年に「BM技術協会」が発足して全国に広がり、
協会員以外にもこの技術を実践している畜産家が
いくつも誕生しています。
次からは「土と水の自然学 - 処理編 - 」の話になります。
Comments