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執筆者の写真有限会社シューコーポレーション

水物語その93 ごみ問題との出会い

「水のことについてこれから長い長いお話をします」

これは水物語その1で第一行目に書いた文章です。

これまでに92話も書いてきましたが

まだ、終わりではありません。


今、世の中は「SDGs」という目標のもと、

価値観や環境に関する問題に取り組むようになりました。

特に自然環境保持への取り組みは、会社などの組織のみならず、

個人の意識改革などが積極的に呼びかけられています。

「持続可能なエネルギーを使って消費と生産を行いましょう」

「未来に繋がる自然を守り育てましょう」

と改めて言われる社会になった根本の原因は

一体、なんなのでしょうか?

17の目標の中にはっきりと書かれてはいませんが

「プラスチックごみ」は自然環境悪化に深く関係しており

タイムリミットが迫った非常に深刻な問題です。

しかし、私たちの衛生的で健康な暮らしのためには

プラスチックの存在は欠かせません。

しかし、プラスチックを使う限り、ごみは出ます。

この問題について、私は約50年前から警鐘を鳴らしていました。

これからは“プラスチックごみ問題“について

お話ししたいと思います。

しかし、“プラスチックごみ問題“と“水つくり”は

一体どう繋がるのか……?

ピンとこない方がほとんどかと思いますので

まずは私とこの深く大きな問題との出会いについてお話しします。



それは1970年に開催された「大阪万博」でのことです。

一大国家プロジェクトして開幕したこのイベントは

3月15日から9月13日までの183日間、開催され

1日の来場数が平均35万人、のべ約6400万人が足を運びました。

会場の面積は、東京ドーム約70個分の330ヘクタール。

来場者以外のスタッフの人数も考えると

いまでは考えられない“密”状態です。


私が大阪万博に足を踏み入れたのは

まだ開幕前のこと、会場もまだまだ建設途中の時です。

巨大なパビリオンにいまも残る太陽の塔など、

当時の日本では規格外の大きさの建造物が、次々と作られました。

その中のひとつに、巨大な噴水がありました。

これは世界的デザイナーのイサム・ノグチ氏がデザインしたもので

人工的にうず潮を作ったり、空中数十メートルに

浮かんでいるように見える金属の立方体から、

高圧のジェット水流が「真下へ」向かって池を叩くように噴出したりなど

非常に画期的なものでした。

周りの建造物に負けない規模のこの噴水は、なんと6種類作られました。

この建設を担当していた栗田工業という大きな企業が

工事の様子を記録し映画にしてほしいと、

制作会社に向けて、企画コンクールを開いたのです。

私はこれに参加することとなり、そのシナリオを書くため

ハンチングに行ったのがはじまりです。


まだ開幕前の会場で、建設中の噴水工事現場を

いくつも見て回る内に、メインである噴水とは別のことが気になってきました。

まず、パビリオンの外に作られた公衆トイレはとても狭く、

会場のサイズに対して明らかに数が少ないこと。

また、会場のあちこちに設置された鉄網製のごみ箱は

直径と高さのどちらも1mもありませんでした。

そして、何よりも清掃担当スタッフ待機場所がどこにもないのです。

「これでは開幕してから様々な問題がでるだろうな…」

と心配していましたがやはりそれは現実となりました。

大阪万博の会場内にはお弁当の持込みが禁止されていました。

すると、来た人々は会場内の売店でお弁当を買うこととなります。

平均35万人が来場していますので、飛ぶように売れていきますが

その後の空となった容器は、設置されているごみ箱には到底入り切りません。

待機場所のない清掃員たちが回収したそのごみは

吹田市の収集所へと集められ全て焼却炉で燃やされます。

しかし、毎日出てくるごみの量は凄まじく

やがて市の焼却炉でも処理しきれなくなり、

会場脇に簡易焼却炉が設置されたのです。

連日大きく万博の報道が続く新聞の片隅に

真っ黒な煙を出しながらどんどん燃やされていく

様子が掲載されていました。

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