1972年に水に関わる2本の映画を作ってから、
本格的な水をテーマにした映画を作るまでには
17年の期間が掛かりました。
1989年に「土と水の自然学」(農業編・処理編・理論編)の各60分を3本、
さらに酪農編・養豚編・養鶏編・耕作編/理論編・食品加工/生活排水処理編の各60分を3本、
計6本です。
この「土と水の自然学」は、当時東京大学の理学博士で火山学者だった内水護博士の著書であり、
それをドキュメンタリー映画として映像化したのです。
内容の要点は、
「良い土は良い水をつくり、良い水は良い土をつくる」という
地球自然の基本原理を現場事実に基づいて紹介するものでした。
「良い水」とは一体どんなものか?
当時の私には見分けがつきませんでしたが、
この原理を提唱して現場を作り上げた
内水博士にはそれが見えていました。
ですから、映像は内水博士に
作られた現場を訪ねてもらい
そこでの一部始終を撮影するという方法で
記録しました。
撮影期間は6か月、記録VTRは1時間もので200本。
それを全部書き起こして、
繰り返し見ているうちに、
私にも水の違いが見えるようになり、
自然原理の実態が解ってきました。
「良い水」で家畜を飼うといろいろなことが変わります。
「乳牛」では、
まず反芻(第1胃袋から出して噛み繰り返して第2胃袋へ送る)回数が増えます。
続いて糞の悪臭が消え、
毛艶が良くなり、
乳質が良くなります。
乳質は脂肪・無脂乳・ 蛋白質の割合が増え、体細胞が低下するのです。
体細胞とは乳房で剥がれる細胞のことで、
頭のフケのようなものです。
これが多いということは
乳牛の健康状態が良くないということ で、
少ないのは健康の証拠、
当然、乳質も良くなるのです。
「養豚」では沢山のことが同時に起りますが省略します。
※水物語33~34で詳述します。
「養鶏」では、
まず糞の悪臭が激減しますので、
鶏舎独特の悪臭が減ります。
そして、卵の 産卵率が上がり、
破卵率(売り物にならない傷卵のこと)が
減り、
卵質が良くなります。
斃死率(産後すぐに赤ちゃんが死んでしまう数の率)も下がり、
異歳鶏をゲージに入れても
病気をしなくなり、
糞も自然に発酵するように なります。
また「良い土」で食品加工排水や生活排水を処理をすると、
まず悪臭が無くなり、河川や自然に戻せる
「良い水」にすることが出来ます。
その原理は、
前回に紹介した「活性汚泥法」と
同じものでした。
しかし、今度は「活性力のある汚泥=土」
とは、どういうものか? どこにあるのか?
と言うことが理論編で解明されます。
内水護博士は、
「活性力のある泥」が出来る原理を
白板に簡単な図を描いて解き明かすのです。
それを図を使わずに説明するのは
難しいですが、文章で紹介します。
「海に面した自然の地形の中には、親指と人差し指を合わせて、
少し開いた形の場所がある。
その中央には周辺の山から流れ込んだ
雨=水が溜まる池=沼ができる。
その沼には周辺の生物=動物・植物等の
死体や枯残物が集約する。
その沼は海に開いているので潮の干満で
海水 が出入りする。
そして、近くに火山があり火山灰が降る。
そういうところでは、
自然の総ての負荷を処理する
もっとも高度で活性力を持つ底土が
生まれる。
何億年も掛かって生まれたその土を
現代文明が破壊した自然の再生に
活用するのがこの手法である。」
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